一番悪いのは誰?

あるところにミリタリー愛好会がありました。
会員は主に30代過ぎの中年の男性でしたが
会長は50代の威厳のありそうなおじさんでした。


愛好会では月に1度の定例会があり、
川原にテントを張っては
あやしい密談をしていました。


夏も終わりそうな季節のある日のことです。
会員の里中さん(仮名)は、
定例会に新人の大田君(仮名)をつれてきました。


その日は定例会と太田君の歓迎会でした。


久々に仲間が増えるということで
愛好会でも少し盛り上がっていました。


太田君はまだ若い青年でした。
警察官志望で、こういうミリタリーにも興味があるような
ちょっとオタク系の男の子でした。


みんな生真面目で礼儀正しい太田君を歓迎しました。

「さあ太田君、一杯やりなよ」
缶ビールを差し出されても
「ボクは未成年ですから」
そういって大田君は断ります。
そこでみんな太田君は真面目な子だなあ、と思いました。


夜も更けてきました。
新人の大田君が良い若者だったので
上機嫌になった会長はこっそりとバッグの中から包みを取り出しました。

出るぞ出るぞ、会長のあれが出るぞ!
周りからはそんなささやきが流れてきます。
会長はゆっくりと丁寧に包みを開けました。


……その途端、周りからため息が漏れました。
スミスアンドウェッソン、M-29の44マグナム。
知っている人は知っている、ダーティーハリーシリーズのハリーキャラハンが持っていた銃です。
「新人君のために今日はこれをお披露目しよう」
会長はそういいました。
この44マグナムは実銃でした。


会長は銃のコレクターでもありました。
みんなから慕われているのはこのためでもあります。
会長は愛好会を通して、みんなに銃の素晴らしさを広めるのが
何よりの楽しみでした。


後日、太田君は、法律違反はいけない、という信念をもとに
会長のことを告発しました。


会長は逮捕され、裁判後、刑務所へと送られました。
ミリタリー愛好会は自然消滅しました。


さてこの中で一番悪い人は誰でしょう?